最近、ふと、「私が初めて出会った芸術」はなんだったっけ・・・? と、疑問に思ったことがあった。
それは、美術館で観た美しい絵画だったろうか。それとも、修学旅行先でみた荘厳な神社仏閣だったろうか…。
いや、どちらもちがう。たしか…もっともっと前に、私は「芸術」に出会っていた。
このことをちゃんと思い出すのに2日間かかった。その間、ずっとモヤモヤしていたが、ようやく思い出したのだ。
それは、小学生の低学年の頃だった。当時、お盆の時期になると、父の実家へ、車で6時間以上かけて帰省をしていた。
子供の自分にとっては、車の中で過ごす6時間は、ものすご~く退屈だったのを覚えている。当然のことながら、スマホなんて無かったし、本を読むにも、車の中では酔ってしまう。
それを察してくれたのか、車の中では色々な曲が流れていた。クラシックだったり邦楽だったり…。おかげで退屈な時間が和らいだ。
だが、当時は子供だったので、邦楽が流れていても、歌詞の内容がほとんどわからなかったし、わかろうともしていなかった。
しかし、その年の夏は違った。
あとどれくらいで到着するのかなぁ~っと、ぼんやりと車の窓から外を眺めていたその時、歌声が聴こえてきた。
「傘がない~♪」
脳内に衝撃が走った。
(傘が…ない!?)
あまりにも衝撃的だったので、その後の歌詞がほとんど頭に入ってこなかったのを覚えている。
そう、それが私が初めて芸術の洗礼にあった瞬間である。
やっと思い出せて、スッキリした。
その時は、まさかそれが芸術だとは思ってもいなかったが、振り返ってみたら、そう、それこそが、私が初めて芸術と出会った瞬間であった。
それ以来、私の中での「芸術作品と向き合う時の物差し」は、車の中で聴いた井上陽水氏の曲の数々だったのだ。
なんて大事なことを忘れていたのだろう。
思い出せて本当に良かった。
皆様もぜひ思い出してみていただきたい。初めて芸術と出会った瞬間を・・・!